ヤマアカガエル(山赤蛙、学名:Rana ornativentris Werner, 1903)は、アカガエル科アカガエル属に分類されるカエルの1種。
体長4.2-7.8cm。体色はオレンジ色から褐色と個体により変異がある。背面には筋状の隆起があり、鼓膜の上部で一度外側へ曲がり鼓膜の後部でまた内側に曲がる。ニホンアカガエルによく似ているが、ニホンアカガエルはこの背側線がまっすぐである[2]。咽頭部には明瞭な黒い斑点が入る個体が多い。種小名ornativentrisは「飾り立てた腹」の意で、腹面の斑紋に由来すると思われる。後肢は長く静止した状態でも指が鼓膜に届き、水掻きは発達している。
卵は黒い球形。幼生の体色は黒や褐色で、背面に黒い斑点は見られない。
ニホンアカガエル
背側線がまっすぐ
丘陵地と山間森林内および、その外縁部にある池、小川、湿地、水田に生息する[3]。
平野部ではニホンアカガエルと混生することもあるが、山地にも生息することが和名の由来。天敵としては食肉類、ニホンイノシシ、動物食の鳥類、ヤマカガシ、アメリカザリガニ等が挙げられる。冬に産卵した個体は再び春になるまで冬眠する。
食性は動物食で昆虫類や節足動物、貝類、ミミズ等を食べる。幼生は雑食で落ち葉や水草、水生昆虫、動物の死骸等を食べる。
繁殖形態は卵生で、1-6月に池沼、湿地、水田、水溜りに1,000個以上の粘着性がある寒天質に包まれた卵を年1回のみ産む。一晩のうちに複数個体が1つの水場に集団産卵することもある。
ミミズを捕食中のヤマアカガエル
卵は14日程で孵化する。幼生は5-8月には変態し、幼体になる。成体になるには生後2-3年程かかる。
土にもぐって冬眠するカエルも多いが、ヤマアカガエル、ニホンアカガエルは水底で冬眠する[4]。
国際自然保護連合(IUCN)により、2004年からレッドリストの軽度懸念(LC)の指定を受けている[1]。
日本の以下の都道府県でレッドリストの指定を受けている[5]。以前は食用とされることもあった。以前は冬にも水を張った水田が多く本種にとって適した産卵場所になっていたが、近年は水田の減少や乾田化により産卵場所が減少している。アクア・トトぎふが2010年に、本種で日本動物園水族館協会による繁殖賞を受賞した。
他の両生類に先駆けて産卵を行いさらに産卵場所が水田等と比較的目に付きやすい場所であることから、卵を採集し飼育されることも多い。
幼生の飼育はさほど難しいものではないが1個の卵塊に1,000以上になる(集団産卵することもあるので場合によってはそれ以上)ため野生個体の保全や飼育の手間を考えると採集する際は飼育できる数のみ分けて持ちかえることが望ましい。孵化した幼生は植物食傾向の強い飼育初期には水草や茹でたホウレンソウ、動物食傾向の強い後期には甲殻類や水棲昆虫(乾燥や冷凍された飼料として販売されている商品もあり)を水を汚さない程度与える。あまり共食いはしないが、無性卵や死亡した個体は他の個体に捕食される。
後肢が生えてきたら水位を低くして木片や流木、水草等で上陸場所の用意をする。
幼体、成体の飼育は生きた小型昆虫の確保が必要になり飼育難易度が大幅に上がる。そのため以前であれば飼育しきれない個体は採集場所へ戻すことが望ましかった[要検証 – ノート]のだが、現在はカエルツボカビ症の問題もあるため一度飼育した個体を野生へ戻してはいけない。