異鰓類(いさいるい)は、軟体動物門腹足綱直腹足亜綱Apogastropoda下綱に属するグループである。分類階級は異鰓上目とすることが多いが、異鰓亜綱や異鰓目とすることもある。
腹足類は巻貝の仲間であるが、異鰓類にはウミウシ、アメフラシ、クリオネ、ナメクジなど貝殻を失ったものや、失わないまでも極度に退化し小片状になったり体内に埋没したものが多くいる。
心臓は異鰓類と異鰓類に近縁な新生腹足類のみが1心房で、他の腹足類は2心房である。
大部分は、内臓神経の交差がない直神経型 (euthyneuy) である。ただし、後鰓類の一部に例外があり、他の腹足類と同じ捩神経型 (streptoneury) をとるものもいる。
陸棲のもの(有肺類)は原則として、他の陸棲貝類のような蓋がなく、粘液の膜で貝殻の口を閉じる。ただし、基眼類の一部は蓋を持つ。
腹足類は古典的には
に3分されてきたが、このうち前鰓類が側系統であることは古くから示唆されてきた。そこで、後鰓類・有肺類と、前鰓類のうちこれらに近縁な異旋類とからなる、異鰓類が提案された。
後鰓類・有肺類・異旋類は、以前は異鰓上目内の目とすることもあったが、後鰓類・有肺類はおそらく単系統でないので分類体系では正式には使わず、かつてこれらに含まれていた目を異鰓上目の直下に属させることが多い。
目レベル(異鰓類が上目の場合)までの分類を挙げる。
Bouchet & Rocroi 2005 より一部変更。ただし Bouchet & Rocroi は異旋類と Architectibranchia を認めず、所属目不明の原始的な異鰓類としているが、ここではその措置は採用しなかった。
系統上の情報は Grande et al. 2004[1]によるミトコンドリアDNAの解析、Klussmann-Kolb et al. 2008[2]による核遺伝子の解析などより。
後鰓類・有肺類・異旋類に分けたが、後鰓類・有肺類は(あるいはひょっとすると異旋類も)単系統でなく、便宜上の分類に過ぎないことに注意。
貝殻が成長過程で幼生殻から後成殻になるときに左巻から右巻に反転する異旋現象が起こる。