ヘリオトロープ(Heliotrope)は、ムラサキ科キダチルリソウ属 (Heliotropium) の植物の総称。とくにその代表種であるキダチルリソウ(H. arborescens)を指すことが多い。
名前には、ギリシャ語のhelios(太陽)+trope(向く)で、「太陽に向かう」という意味がある [2][3]。
ペルー原産。フランスの園芸家が1757年(宝暦7年)にパリに種子を送り、ヨーロッパほか世界各国に広まった。日本には明治時代に伝わり、今も栽培されている[4]。
ヘリオトロープには約250種があるといわれる[5]。
日本語で「香水草」「匂ひ紫」、フランス語で「恋の花」などの別名がある[6]。
バニラのような甘い香りがするが[7]、その度合いは品種によって異なる。
花の咲き始めの時期に香り、開花後は、香りが薄くなってしまう特徴がある[2]。
ロジェ・ガレ社(フランス)の『Heliotrope Blanc』(フランスでは1892年(明治25年)に発売)は、日本に輸入されて初めて市販された香水といわれている[8][4]。
大昔は南フランスなどで栽培されており、天然の精油を採油していた[9]。しかし、収油率の低さ、香りの揮発性の高さというデメリットから、合成香料で代用して香水が作られるようになった(有機化合物であるヘリオトロピンがヘリオトロープの花の香りがすることが1885年(明治18年)に判明し、それを天然香料の代用として普及した[10])。
夏目漱石の小説『三四郎』(1908年(明治41年))でも、ヘリオトロープの香水が登場する[10]。
本来は不耐寒性または半耐寒性の灌木で、実生からだと開花までに数年を要したが、戦後、播種した年に開花する早生品種が作出され、家庭でも鉢植えやプランター植えで楽しむことができる。タネは春の彼岸の頃に室内でまき、霜の心配がなくなってから路地に定植すると、夏から秋にかけて花を楽しむことができる。