アクウィフェクス門(Aquificae)は、グラム陰性、好熱性の真正細菌の門である。温泉や海底火山近傍に生息し、水素を酸化して増殖することを特徴とする。16S rRNA系統解析からは真正細菌の中でも最も初期に分岐したことが示されている。
典型的には好気的に水素を酸化し、二酸化炭素を唯一の炭素源とする化学合成独立栄養生物である。この他に硫黄や亜ヒ酸を酸化する種や、嫌気条件で最終電子受容体に硫黄や窒素、硝酸塩を用いることもできるもの、稀だが有機物を利用する従属栄養性の種もいる。グラム陰性で、形態は棒状の桿菌、一方の端または両端に鞭毛をもつものが多い。
分布としては水素と酸素に富む中性~弱アルカリ性の熱水域に多く見られる。温泉などである程度塊になっていると肉眼でも観察できる場合がある。生育温度はおおむね60℃以上で、Aquifex属は最高95℃で生育が可能。これらアクウィフェクスの仲間は、古細菌(最高122°C)を除く生物として最も好熱性に長けた生物群であると言える。
アクウィフェクス目の下位は現在3科に分けられている。分類は分岐学に従って行われているため、性質の違いを表してはいない。事実、各科に嫌気性のものや従属栄養性のものがばらばらに存在している。
現在アクウィフェクスには独立した門が与えられることが多い。これは16S rRNA及び23S rRNA系統解析で最も深い分岐を示すことと、真正細菌の中でも特に好熱性が強いことによる。このことから、しばしばコル古細菌と共に生命の起源に最も近い生物として扱われることがある。
しかしながら、アクウィフェクスがむしろ派生的な系統であることを示す近年の研究も存在する。多数の遺伝子を使ったより詳細な系統解析も行われているが、それらの中にはアクウィフェクスとプロテオバクテリアの近縁性を支持するものもある。