スベリヒユ(滑莧、学名: Portulaca oleracea[2])は、スベリヒユ科スベリヒユ属の多年生植物。
同属にはマツバボタンなどが知られる。
茎は赤紫色を帯び、地を這って分枝[3]。葉は長円形の肉質で互生[3]。
夏期、枝先に黄色の小さな花を咲かせる[3]。果実は熟すと上部が取れる蓋果で、黒色の種子が落ちる[3]。
C4型光合成を行なうと同時にCAM型光合成(CAM[4])を行う多肉植物[5]であるため、液胞に蓄積されたリンゴ酸に由来する酸味があり、ぬめりのある独特の食感を持つ。
世界の熱帯から温帯にかけて幅広く分布し、日本全土で見られる[3]。
乾燥耐性があり、畑や路傍など日当たりの良い所に自然に生える[3]。農業においては畑作の害草として知られ、全般的に執拗な雑草として嫌われる傾向にあるが、地域によっては食料として畑作もされる。
「莧」(草かんむりに「見」)の字を当てる。「スベリヒユ」の名は茹でた際に出るぬめりに由来するとされる[6]。
中国では生薬名でもある後述の馬歯莧のほか、馬歯菜、五行草、酸莧、豬母菜、地馬菜、馬蛇子菜、長寿菜、老鼠耳、宝釧菜など複数の呼び名がある。
スベリヒユおよびその近縁の種は健康食品としても使われるω-3脂肪酸を多量に含む植物として知られている。山形県では「ひょう」と呼び、茹でて芥子醤油で食べる一種の山菜として扱われており、干して保存食にもされた。また沖縄県では「ニンブトゥカー(念仏鉦)」と呼ばれ、葉物野菜の不足する夏季に重宝される。
全草を「馬歯莧」(または莧を見で代用して馬歯見;ばしけん)と呼び、民間薬として解熱、解毒、虫毒に利用される[7]。また、利尿作用があり、葉の汁は虫刺されに効くと『資源植物事典』(1949) で紹介されていた[8]。
古くプリニウスの『博物誌』では、porcillaca として、さまざまな傷病に効く薬草として紹介されている[9]。
「ひゆ菜」「莧菜/苋菜(広東語:インチョイ)」「chinese spinach」などの名で流通している葉菜があるが、これは別科(ヒユ科)のアマランサスの一種である。
タチスベリヒユ P. o. L. var. sativa (Haw.) DC.
ハナスベリヒユ Portulaca oleracea L. x P. pilosa L. subsp. grandiflora (Hook.) R.Geesink[10]