イボイモリ(Echinotriton andersoni)は、有尾目イモリ科イボイモリ属に分類される有尾類。イボイモリ属の模式種。
奄美大島ではシリケンイモリを含むイモリ類をチョウチンブラ[4]、ソチムラなどと呼ぶ。
日本(奄美大島、請島、徳之島、沖縄島、瀬底島、渡嘉敷島)[5][6]固有種。
台湾島に分布するとされることもあるが、確実な証拠はない[7]。
なお、同属異種のチンハイイボイモリ(Echinotriton chinhaiensis、鎮海棘螈)が中国浙江省寧波市北侖区(旧鎮海県)[8]の瑞岩寺周辺[9]等に生息する。
全長13 - 19センチメートル[5]。頭胴長オス7.5 - 8.5センチメートル、メス7.2 - 10センチメートル[2]。頭部や胴体は扁平[3][6]。正中線上に隆起が発達し、体側面には7 - 9本の肋骨が伸長した鋸状や葉脈状の隆起がある[2][3][6]。肋骨に突起(上肋骨突起)があり体表に突出し疣状になる[7]。体色は黒褐色だが[2]、まれに赤褐色の個体もいる[3]。四肢や尾の腹面、総排泄孔、肋骨先端部の隆起は橙色や黄色[2][3][5]。
常緑広葉樹からなる自然林・二次林、草原、池沼などに生息する[2]。落ち葉や倒木の下などで生活する[5][6]。
ミミズ、陸棲の巻貝、クモ・ワラジムシなどの節足動物・甲虫などの昆虫などを食べる[2]。
繁殖様式は卵生。1 - 6月に池や溝、河川の水辺からやや離れた地中や落ち葉の中・苔で覆われた岩などに卵を産む[2][5][6]。卵は1か月で孵化する[2]。幼生は自力で水場まで移動したり、雨水に流されて水場まで移動する[2]。幼生は2 - 3か月で変態し、幼体になる[2][3]。飼育下ではメスが生後4年以内で性成熟した例がある[3]。寿命は10年以上と考えられている[2][3]。
森林伐採や土地造成による生息地の破壊、ため池などの繁殖地の埋め立て、ホテルやゴルフ場の取水による土壌の乾燥化、舗装道路での轢死、道路脇の側溝敷設による落下死・乾燥死、人為的に移入されたアメリカザリガニ・ティラピア・フイリマングースなどによる捕食などにより、生息数は減少している[2][3]。2016年に国内希少野生動植物種に指定され、卵も含め捕獲・譲渡などが原則禁止されている[10]。1978年に沖縄県、2003年に鹿児島県でそれぞれ県の天然記念物に指定されている[3]。