チスイコウモリモドキ(Vampyrum spectrum)は、哺乳綱 - コウモリ目(翼手目)- ヘラコウモリ科 - チスイコウモリモドキ属に分類されるコウモリ。本種のみでチスイコウモリモドキ属を形成する。
メキシコから南アメリカ大陸北部(ブラジル北部、ペルー、エクアドル、スリナム、ガイアナ)及びトリニダード・トバゴなどの常緑樹林に生息[1]。
体長約13.5 - 15cm、前腕長約10 - 11cm、と大型のコウモリ。形態はヘラコウモリに似るが、長い吻は滑らかな形状である。翼幅は1mに達する個体も存在する。オオコウモリの分布しないアメリカ大陸においては最大級となる。背中の体毛は短く、暗褐色あるいはオレンジがかった茶色。耳は長く伸びる。[1]翼は大きく幅広であるが尾は極めて短く、判別が難しい。肉食ではあるが、歯列は昆虫食のコウモリに似る[2]。
コウモリとしては珍しい肉食の捕食者である。長さに比して幅の広い翼で巧みに飛び回り、獲物を捕食する[2]。獲物は他のコウモリやネズミなど小型哺乳類、ミソサザイやインコ、ウグイスなどの鳥類、そして両生類や爬虫類など。また、大型のコオロギやセミなどの昆虫を捕らえる事もある。これらの獲物は直接口で捕らえ、牙で止めを刺す。[1]
昼間は樹洞などをねぐらとし、五匹ほどの群れをつくる[1]。
広い分布を持つものの、かれらは高次の捕食者であるため、元々個体数は少ない[2]。その上、生息環境が破壊されつつあるため、絶滅が危惧されている[1]。