マタタビ(木天蓼[注 1]、Actinidia polygama )は、マタタビ科マタタビ属の落葉蔓性木本である[1]。別名夏梅ともいう。
蔓は、若いうちは茶褐色で成長と共に黒っぽい紫がかった茶色になる。葉は蔓状の枝に互生し長い葉柄があり2から7cm、形は楕円形で細かい鋸歯を持つ。6月から7月に径2cmほどの白い花を咲かせる。雄株には雄蕊だけを持つ雄花を、両性株には雄蕊と雌蕊を持った両性花をつける。花弁のない雌蕊だけの雌花をつける雌株もある。花をつけるつるの先端部の葉は、花期に白化し、送粉昆虫を誘引するサインとなっていると考えられる。近縁のミヤママタタビでは、桃色に着色する。実は、2から2.5 cm の細長い楕円形で晩秋にオレンジ色に熟す。虫こぶの実(虫癭果)はマタタビミバエの産卵により形成[1]され正常な実が熟す前に落ちる。
効果に個体差はあるものの、ネコ科の動物は揮発性のマタタビラクトンと総称される臭気物質イリドミルメシン、アクチニジン、プレゴンなど[2]に恍惚を感じることで知られており、イエネコがマタタビに強い反応を示すさまから「猫に木天蓼」ということわざが生まれた。ライオンやトラなどネコ科の大型動物もイエネコ同様マタタビの臭気に特有の反応を示す。なおマタタビ以外にも、同様にネコ科の動物に恍惚感を与える植物としてイヌハッカがある。
日本では、北海道、本州、四国、九州に、アジアでは千島列島、朝鮮半島に分布し、山地の林縁に自生する。
古くは『本草和名』(918年)に「和多々比」(わたたひ)、『延喜式』(927年)に「和太太備」(わたたび)の名で見える[3]。
貝原益軒『日本釈名』(1699年)では、果実に長いものと平らなものができることから、「マタツミ」の義であろうという[4]。
アイヌ語の「マタタムブ」からきたというのが、現在最も有力な説のようである。『牧野新日本植物図鑑』(北隆館 1985。331ページ)によるとアイヌ語で、「マタ」は「冬」、「タムブ」は「亀の甲」の意味で、虫えいを意味するとされる。一方で、『植物和名の研究』(深津正、八坂書房)や『分類アイヌ語辞典』(知里真志保、平凡社)によると「タムブ」は苞(つと、手土産)の意味であるとする[5]。
一説に、「疲れた旅人がマタタビの実を食べたところ、再び旅を続けることが出来るようになった」ことから「復(また)旅」と名づけられたというが、マタタビがとりわけ旅人に好まれたという周知の事実があるでもなく、また「副詞+名詞」といった命名法は一般に例がない。むしろ「またたび」という字面から「復旅」を連想するのは容易であることから、典型的な民間語源であると見るのが自然であろう。
蕾にマタタビミタマバエまたはマタタビアブラムシが寄生して虫こぶになったものは、木天蓼(もくてんりょう)という生薬である。冷え性、神経痛、リウマチなどに効果があるとされる[8]。