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スミレ属(Viola)は、スミレ科に含まれる属の一つ。スミレ、パンジー、ビオラ(ヴィオラ)など多くの種を含む。
スミレ科にはおよそ16属850種があるが、そのうち400種をスミレ属が占める。科全体としては樹木の方が多く、スミレ属がほとんど草本からなるのはやや特殊である。スミレの仲間は現在盛んに種分化が進行していると考えられるため、非常に変化が激しく、日本では各地の変種や色変わりをも含めて、学名があるものが250もある。分布は沖縄から北海道までの全土に渡り、各地に固有種がある。道ばたや野原に咲くものもあれば、山奥の渓流のほとりに咲くもの、高山のお花畑に咲くものまで、様々である。
日本産のものはすべて草本である。河畔のヨシ群落に生息するタチスミレのように背が高くなるものもあるが、ほとんどが背の低い草で、茎を地表より高く伸ばさないものが多い。葉はハート型か、それを引き伸ばしたような形をしている。
花茎の中ほどに1対の小苞がつく。花の形は基本的には似ていて、左右対称で、見ただけでスミレとわかるものである。花は5弁、そのうち1つが大きく、基部は後ろに突き出して袋状の距(きょ)を作る。多くは下側の大きい花びら(唇弁)に若干の模様が出る。果実は朔果(さくか)で、熟すると三つに割れ、断面に種子が並んでいるのが見えるようになる。そのうちに果実が乾燥して縮み、種子は押し出されて弾け飛ぶ。種子にはエライオソームと言われる付属物があり、これがアリを誘引して、種子散布の助けになると考えられる。また、閉鎖花をつけるものがよくある。 高山のものは黄色い花をつけ、それ以外のものは紫、青か白系統のものが多い。
スミレの語源は昔の大工用具「墨入れ」に由来し、距を墨入れに見立てたものとしたと云う牧野富太郎の唱えた説がよく知られているが、異説もある。
オトメスミレ(タチツボスミレの変種)
日本では野に咲く花の代表として知られ、古くから親しまれてきた。しかし、世界中には様々なスミレがあり、園芸用に栽培されているものも多数ある。身近に見られる例で、花びらが大きくて平たく広がった交配種のグループはパンジー(pansy)と呼ばれる。日本の園芸用語として、小型の物はヴィオラ(viola)の呼称で呼ばれることがある。従前、“三色スミレ”という呼称で愛されたが、交配親のひとつであるViola tricolorとパンジー全体の呼び名との混用もあり、現在では余り使用されなくなった。[要出典]
欧米では、パンジー以上にヴァイオレット(ニオイスミレ)が栽培され、香水や化粧品に加工される他、観賞用植物としてもさまざまな品種が作出されている。欧州でスミレの使用についての最初の記録は古代ギリシャで、薬用に使われていた[1]。キリスト教の伝統では、スミレは聖母マリアと関連付けられており、謙虚さの象徴であり、花輪に使用される[1]。チューダー朝時代には、頭痛やうつ病、便秘に効くとされ、ストリューイング・ハーブ(床などに撒く香草。中世の英国では体臭消しのため、入浴する代わりに香りのよいハーブを撒き、人が踏み歩くことで芳香を出した)にも適していた[1]。18世紀までに化粧品や香水に使われるようになり、フランスやイギリスで商業的に発展した[1]。不快な匂いが蔓延する大都市では匂い消しに小さな花束にしたものが広く販売され、服のポケットやボタン穴、帽子などに付けて使用された[1]。
この他、観賞用のスミレとして外国から持ち込まれた物にViola sororiaがある。花の色などが異なる複数の品種があるが、繁殖力が非常に強いこともあって各地で既に野生化しており、一部では問題視されている。主に南西諸島から九州にかけて見られるツクシスミレも、かつて観賞用のスミレとして持ち込まれたものが野生化したものと見られている。
歴史上の人物で、ナポレオン1世のスミレ好きは有名で、妻ジョセフィーヌの誕生日にはスミレを送っていたとのこと。島流しになった際も、「スミレが咲く頃には戻ってくる」と言い残したとの話もある。これを含め、ヨーロッパで言及されるスミレはニオイスミレのことであることが多い。また、イギリスのヴィクトリア女王もスミレが好きで、日記にスミレについての記述が105回も登場し、とくに晩年はスミレの栽培が盛んだったコート・ダジュールで毎年休暇を楽しんだ[1]。ヴィクトリア時代のイギリスでは、スミレはその花姿から謙虚さや忠誠心の象徴とみなされていた[1]。
パンジーなど、一部はエディブル・フラワーとしても利用される。
スミレは山野でごく自然に見られるイメージがあるが、それ自体が人間との関わりの結果とも言える。スミレはかなり劣悪な環境下でも生える一方、周囲の草が濃く草丈が高いと生えにくい傾向がある。そのため、人の手の入りやすい野原や登山道脇などが生育に適した環境になる場合が多い。 これが、我々の目に触れる事が多い理由の一端である。絶滅が危惧されているスミレの仲間に関して各地で保護活動が行われている理由の一つにも、このような性質がある。
スミレといえば、ワーズワーズが詠んだ詩、「スミレは苔のはえた石の下で半ば人目にかくれて咲いている。空にひとつ光っている星のように美しい。」が有名。
スミレ属は世界の温帯に約400種、日本には約50種がある[2]。しかしながら、地方変異やさまざまな変異があり、非常に多くの変種や品種が知られている。単なる形変わりと思われるものまで含めれば、学名が与えられているものの数は200にも達する。人目を引く色や姿であり、愛好家が多い関係もあるが、非常に変異の多いのもまた事実であり、“日本はスミレ王国”とさえ言われる。[要出典]
スミレ属の種についてはウィキスピーシーズのスミレ属を参照