甲殻類(こうかくるい)は、節足動物の分類群の一つ。分類学上では甲殻亜門(こうかくあもん) Crustacea と呼ばれる。
エビ、カニ、オキアミ、フジツボ、ミジンコなどを含むグループである。深海から海岸、河川、湿地まで、あらゆる水環境に分布するが、主に海で多様化している。陸上の生活に完全に適応しているのはワラジムシ類など僅かである。
系統関係については、現在、汎甲殻類説が最も有力視されている。それによれば、甲殻類は六脚類と共に単系統を成し、甲殻類という分類群も側系統群となる。
体は頭部、胸部、腹部に分かれる。頭部と胸部は見かけ上まとまって、頭胸部を構成することがある。頭胸部背面から伸びた甲羅状の構造があり、背甲と呼ばれる。これによって頭胸部、あるいは全体を覆っているものが多い。全くこれを欠くものもある。
頭部、胸部、腹部は複数の体節から構成され、各体節には付属肢がある。付属肢の基本形は外肢と内肢に分かれた2叉型。さらに付属肢の基部の節に外葉、内葉がつく場合もある。外葉は副肢ともよばれる。付属肢や副肢は多様な機能に合わせ変形したり退化している。
頭部には2対の触角があり、第1触角は往々にして2叉分枝する。口には1対の大顎、2対の小顎の3対の口器があり、往々にして胸部の前方の附属肢が顎脚として口器に参加する。
胸部の付属肢は歩行用および遊泳用に使われ、外肢や副肢は退化したり鰓になっていることがある。腹部の付属肢は軟甲綱以外では退化している場合が多い。腹部末端の尾節には尾肢あるいは尾叉などと称する付属肢起源の構造があることが多い。
幼生は2対の触角と口器を持つノープリウス幼生で、変態を行って成体になる。より発生の進んだ形で孵化するものや、成体に近い姿で生まれるものもある。
人によく知られているのは遊泳性や歩行性のものだが、固着性や寄生性のものも多い。それらのものでは足や体節が失われていたり、極端な場合は節足動物に見えない姿のものがある。体の大きさはヒメヤドリエビが全長0.09 mmから、タカアシガニの足を広げて3mまでの広い範囲にわたる[1]。
甲殻類の生息環境は海を中心としている。鰓脚綱のものは、大部分が陸水産であるが、それ以外の類はほとんどが海産である。海中に於いてはプランクトン性のものから、底性、潜行性とさまざまなものが、極地や深海の熱泉を含むあらゆる環境に生息している。陸上であれだけ優勢な昆虫類が海産種をほとんど持たない理由として、往々に甲殻類が多くのニッチを占めていることが挙げられる。
淡水では鰓脚綱、エビ、カニなど分類群は限られるが、多くの種があり、河川、湖、池から小さな水路、あるいは地下水にまでさまざまな場所に生息する。海から切り離されて淡水となった湖には、海産の群の特殊なものが出現する場合があり、海跡動物と呼ばれる。
陸に生息するものは更に種類が少なく、カニ類、ヤドカリ類と等脚類(ワラジムシ・ヒメフナムシ・ダンゴムシ)、端脚類(ヨコエビ)、ケンミジンコ類とカイミジンコ類などの少数の種が知られている。土壌生物として繁栄しており、一般に土壌中のバイオマスとしては上位を占め、しばしば優占する[1]。
十脚類では他の動物と共生生活をするものも知られる。カニ、ヤドカリとイソギンチャク、ハゼとテッポウエビなどが有名である[2]。
食性は肉食のものから草食、デトリタス食、寄生性まで多岐にわたる。
繁殖時には卵が孵化するまでメスの育児嚢や腹脚等に付着させるものが多い。また孵化後もしばらく親が保護する習性を持つものが等脚類などに知られている。カリブ海では真社会性のテッポウエビが発見されている(以上、朝倉(2003)等から)。
古生代カンブリア紀から知られており、以降多くの化石種が知られている。バージェス動物群のカナダスピスが軟甲類であるとの説もあったが、異論もある。現行の分類群では顎脚綱の化石がカンブリア紀まで遡る。貝虫類のものは殻が微化石としてよく出るので研究もよく行われ、現在知られている種数が、現生種より化石種の方が多いほどである。
節足動物における位置と共に、甲殻類の下位分類も分子系統学と分岐分類学によって大きく変わった。特にRegier et al. (2005)[3]以来の分析から、甲殻類は六脚類を除く側系統であること、長く認められてきた顎脚綱は多系統であることが定説になった。綱や上綱の再分類、特に顎脚綱から独立した幾つかの分類群については学者によって様々なの新系統が提唱されている。
下記の分類はOakley et. al. (2013)にしたがった[4]。