原生粘菌(げんせいねんきん、Protostelia)、あるいはプロトステリウム目は、アメーバ状の変形体を持ち、小さな子実体で胞子を作る微生物である。プロトステリウム類とも言われる。
原生粘菌は、20世紀半ばに発見された新しい群である。栄養体は多核のアメーバ状であり、子実体を形成することなどで変形菌類に似るが、ごく小型で、子実体の構造に異なった点が多く、別個の群と考えられた。
子実体はごく簡単な構造で、管状で非細胞性の柄の先に一個ないし四個の胞子が乗るだけのものである。その高さは0.5mmに達しない。胞子は単核または多核。胞子が好適な場所に付着すると、発芽してアメーバ状となる。胞子の発芽の際に鞭毛細胞を生じるものも知られる。この栄養体は微生物を食べて成長し、種によっては網状で多核の変形体に成長する。変形体が成長すると、断裂してそれぞれに子実体となる。
有性生殖は知られていない。
一般に植物体の上の枯れた部分、枯れた花や果実、樹皮の上などから見つかる。土壌から発見されることもある。
発見が遅く、他の群についてある程度の知識があった状態で発見されたから、それらとの関係において考えられることが多かった。変形菌や細胞性粘菌類の祖先的な生物ではないかとも言われたこともある。
また、変形菌類は普通は内生胞子を形成するのであるが、ツノホコリ類だけは樹枝状の子実体の表面に、多数の柄を出してその先端に外生胞子をつける。そのため、ツノホコリ類に近縁なのではないか、あるいはむしろ、ツノホコリ類が実は変形菌類ではなく、巨大な原生粘菌なのではないかとの説も浮上している。いずれにせよ、この類は変形菌類に近縁であるかもしれないが、細胞性粘菌とは縁が遠いものと考えられる。分子遺伝学的情報もこれを支持している。分類体系上の扱いとしては、独立した門とする説、これにツノホコリを追加する説、変形菌門に含め、ツノホコリと共に原生粘菌綱 (Protosteriomycetes) を立てる説、単にツノホコリ目に含める説があるが、少なくともツノホコリを一緒にすることが多くなっている。
ツノホコリを除くと世界で2科13属が知られているが、分類体系は不確定な部分が多い。代表的な属を挙げる。