マダガスカルマングース科(マダガスカルマングースか、Eupleridae、別表記:エウプレルス科[2])は、マダガスカル固有の7属9種から成る食肉目の科。代表的な種にフォッサ Cryptoprocta ferox 、ワオマングース Galidia elegans などがある。
従来の形態学的分類では、ジャコウネコ科にフォッサ亜科 Cryptoproctinae フォッサが、コバマングース亜科(エウプレルス亜科) Euplerinae にマダガスカルジャコウネコおよびコバマングース(別名ファラノーク)が分類され、ワオマングースなど4属6種(2010年に発表された新種ダレルズ・ボンツィラを含む)はマングース科ワオマングース亜科(ガリディア亜科) Galidiinae に分類されてきた[3]。
最近の分子系統学の研究では、マダガスカルに現存する8種(9種)の食肉目は2400万年前から1800万年前の間(誤差も考慮すると3300万年から1400万年前)に漂流物に乗ってアフリカ本土から渡来してきたマングース科の祖先から進化したことが示された[3]。このことは、マダガスカルの食肉目はアフリカ本土のマングース科と密接な関係をもつ単一の系統群(単系統群)であることを意味する[4]。この科の内、フォッサとマダガスカルジャコウネコがもっとも古い種と考えられている。
生息環境の破壊や外来種との生存競争によって、いくつかの種は危急種(VU)や準絶滅危惧(NT)と評価されている[5]。
歴史的に見てマダガスカルに生息する食肉目の分類は議論の多い問題であったが、分子系統学の研究からはこれらが単系統群であることが示され、マダガスカルマングース科として認められた[6][7]。またハイエナを含むハイエナ科 Hyaenidae はマダガスカルマングース科およびマングース科の姉妹科として、ジャコウネコ科やネコ科と共にネコ亜目の下位に分類された[8][9]。
マングース科とマダガスカルマングース科の間の分岐は漸新世(約3,400万年前から約2,300万年前までの期間)にまで遡ることができる[9]。そのころのネコ亜目の種は互いに多くの類似点をもっていたが、とくにネコ類とマングース類の間には共通点が多かった。ネコ上科 Aeluroideaに分類される絶滅種パラエオプリオノドン Palaeoprionodon は、始新世の後期或いは漸新世初期のヨーロッパとアジアの地層から化石が発見されているが、現代のフォッサに似た外観をもっている。一方絶滅したネコ類の一種であるプロアイルルス Proailurus は今日のジャコウネコ類によく似た特徴をもつ[10]。
化石記録ではこのような類似点がみられたものの、現代のマダガスカルマングース科の下位分類であるエウプレルス亜科とガリディア亜科には形態上明らかな違いがあり、エウプレルス亜科はジャコウネコ類と、ガリディア亜科はマングース類との間に類似点がある[8]。エウプレルス亜科(フォッサ、コバマングース、マダガスカルジャコウネコ)の耳骨胞(耳嚢、auditary bulla)はジャコウネコに似るが、ワオマングース類はマングース科に似た耳嚢をもつ。こうした特徴から、1996年ロバート・M・ハンター Jrはマダガスカルへの食肉目の渡来は2度あり、1度目はジャコウネコ類、2度目はマングース類であったとした。これに対し、2003年のアン・ヨーダーらによる遺伝子研究からは、原始的なマングース類の渡来が一度あり、その後直ぐに適応放散して多様化したことが示された。このマダガスカルマングース科の共通祖先は漸新世後期から中新世初期(2400万年前 - 1800万年前)にアフリカから、おそらくは漂流物に乗って渡来したとされるが[8][9]、他方フィリップ・ゴーベールとジェラルディン・ベロンは分岐の年代を1940万年前(2270万年前から1650万年前の間)と見積もっている[9][11]。
C. ferox (フォッサ)
†C. spelea (ジャイアントフォッサ)
ファナロカ属 Fossa (マダガスカルジャコウネコ)
コバマングース属 Eupleres (コバマングース)
ワオマングース属 Galidia (ワオマングース)
G. fasciata (ヒロスジマングース)
G. grandidieri (オオヒロスジマングース)
S. durrelli (ダレルズ・ボンツィラ)
S. concolor (サラノマングース)
ホソスジマングース属 Mungotictis (ホソスジマングース)
(その他ネコ亜目)
ジャコウネコ科 Viverridae
ハイエナ科 Hyaenidae
マングース科 Herpestidae
マダガスカルマングース科 Eupleridae
マダガスカルマングース科の肉食獣は、アフリカ大陸東部沿岸にあるマダガスカル島の固有種である。在来種としては唯一の食肉目であったが、ヒトが住むようになってからはイエネコ、イヌのほかコジャコウネコなども移入した。
主に森林地帯に住むが、マダガスカル東部の熱帯雨林、西部の落葉樹林(ホソスジマングース)および南西部の乾燥有刺林(オオヒロスジマングース)など、森林の種類によって生息する種が異なる。ただしフォッサとワオマングースの一部個体は森林の種類に関係なく生息し餌を求めて種類の違う森林を行き来することもある。種の密度は東部の熱帯雨林地帯で多く、多い場所では5種が同所に生息する。一方、西部及び南西部は種の密度は低いが個体数の密度はむしろ高いと言えるかもしれない[12]。
マダガスカルの肉食哺乳類とその他の地域の肉食哺乳類とを明確に区分する形態学的特徴は無い[13]。むしろ収斂進化の結果各種がそれぞれネコ、ジャコウネコ、マングースなどに似た形態をもつようになった。このことは形態からの分類が容易ではない理由のひとつでもある。マダガスカルマングース科最大の種はフォッサで、大きなものでは体長80cm、体重12kgにもなるが、サラノマングースなど小型のものでは体長26cm、体重500g程しかない。雌雄で体毛の色に差異はないが、いくつかの種ではオスの方が大きい。体型は概して細長く、四肢は短い。フォッサのように爪を自由に出し入れできる種もある。
体毛は短く密集して茶色または灰色であるが、種に様々な色調を持ち斑点や縞模様をもつものもある。尾は胴よりやや短くふさふさしていて、ワオマングースを除いては単色である。頭部は胴体に比べて小さく、口先がとがっており、フォッサの頭部はネコ科に似て顔の面積は小さい。肉食哺乳類の特徴である犬歯(いわゆる牙)は、フォッサを除いてはあまり目立たない。特にコバマングース(ファラノーク)では歯の形状が昆虫食に適した形になっている。
マダガスカルマングース科(マダガスカルマングースか、Eupleridae、別表記:エウプレルス科)は、マダガスカル固有の7属9種から成る食肉目の科。代表的な種にフォッサ Cryptoprocta ferox 、ワオマングース Galidia elegans などがある。
従来の形態学的分類では、ジャコウネコ科にフォッサ亜科 Cryptoproctinae フォッサが、コバマングース亜科(エウプレルス亜科) Euplerinae にマダガスカルジャコウネコおよびコバマングース(別名ファラノーク)が分類され、ワオマングースなど4属6種(2010年に発表された新種ダレルズ・ボンツィラを含む)はマングース科ワオマングース亜科(ガリディア亜科) Galidiinae に分類されてきた。
最近の分子系統学の研究では、マダガスカルに現存する8種(9種)の食肉目は2400万年前から1800万年前の間(誤差も考慮すると3300万年から1400万年前)に漂流物に乗ってアフリカ本土から渡来してきたマングース科の祖先から進化したことが示された。このことは、マダガスカルの食肉目はアフリカ本土のマングース科と密接な関係をもつ単一の系統群(単系統群)であることを意味する。この科の内、フォッサとマダガスカルジャコウネコがもっとも古い種と考えられている。