Testudo elegans Schopff, 1795
和名 インドホシガメ[4]インドホシガメ(Geochelone elegans)は、爬虫綱カメ目リクガメ科リクガメ属に分類されるカメ。リクガメ属の模式種[4]。単にホシガメとも呼ばれる[4]。
インド南東部および西部(アーンドラ・プラデーシュ州東部、カルナータカ州南部、グジャラート州、ケーララ州北東部、タミル・ナードゥ州、マディヤ・プラデーシュ西部、ラージャスターン州南部)、スリランカ、パキスタン南東部(シンド州東部)[4][5]
最大甲長38.1センチメートル[4]。体重7キログラムに達した例がある[4]。オスよりメスの方が大型になり、オスは甲長20センチメートル以上になることはまれ[4]。スリランカの個体群は周年植生の豊かな環境に生息するため大型化するとされる[4]。背甲はドーム状に盛り上がり、上から見るとやや細長い[4]。背甲の頂部は盛り上がり、水平にならない[4]。野生下では孵化直後からある甲板(初生甲板)がわずかに盛り上がる(野生個体では不明瞭だが、飼育個体では顕著に盛り上がる個体が多い)[4]。背甲の色彩は黒や暗褐色で、椎甲板や肋甲板には黄色や黄褐色の放射状の斑紋が6 - 12本ずつ入る[4]。この放射状の斑紋が星の様に見えることが、和名や英名(star=星)の由来になっている[4]。種小名elegansは「優雅な」という意で、背甲の斑紋に由来すると考えられている[4]。縁甲板には放射状に黄色や黄褐色の筋模様が1 - 4本入る[4]。 腹甲の色彩は黒や暗褐色で、甲板ごとに放射状に灰褐色や淡黄褐色、黄褐色の斑紋が入る[4]。
頭部は中型[4]。上顎の先端は二股か三又に分かれる(一尖の個体や尖らない個体もいる)[4]。四肢はやや頑健で、前肢には先端が尖った大型鱗が5 - 7列で並ぶ[4]。後肢と尾の間には円錐形の小型鱗が並ぶ[4]。頭部や頸部、四肢、尾の色彩は黄色や黄褐色で、不規則に細かい黒色斑が入る[4]。顎を覆う角質(嘴)や鼓膜、喉の色彩は褐色や灰褐色[4]。
卵は長径3.8 - 5.3センチメートル、短径2.7 - 3.9センチメートルの楕円形だが、直径3.5 - 4センチメートルの球形の卵を産むこともある[4]。
主に乾季と雨季が明瞭な標高200メートル以下(ラージャスターン州では標高450メートルにも生息する)にある環境に生息し、インド南東部ではサバンナや藪地、インド西部とパキスタン南東部では砂漠の周辺にあるステップや藪地、スリランカではサバンナや熱帯雨林に生息する[4]。食物があれば前述した環境を開発した畑、牧草地、プランテーションにも生息する[4]。雨季には昼行性傾向が強くなるが、乾季や暑季には薄明薄暮性傾向が強くなる[4]。
食性は植物食で、主にAmmannis属・Aristda属・Cissus属・Cymbopogon属・Dichanthium属・Sporobolus属などの草、木の葉、多肉植物、果実、花などを食べる[4]。陸棲の巻貝、動物の死骸、ウシやヒツジなどの家畜の糞などを食べた例もある[4]。
繁殖様式は卵生。繁殖期にオス同士が出会うとお互いに体当たりをして争う[4]。一方でオスがメスに対して攻撃的な求愛行動を行うことは少ない[4]。雨期に交尾を行う[4]。交尾から産卵まで90日かかることもある[4]。1回に1 - 10個の卵を年に2 - 4回に分けて産み[5]、年に23個の卵を産んだ例もある[4]。分布域の土壌がラテライトなどで堅いため雨期に産卵し、後肢で地面に深さ10 - 15センチメートルの穴を掘ってその中に卵を産む[4]。卵は主に110 - 150日で孵化するが、約50日で孵化することもある[4]。これは発生が完了しても周囲の環境が孵化に適するまで幼体が卵の中で待機するためで、雨期になると孵化した幼体が一斉に地表に現れることもある[4]。インド南東部個体群はオスが生後3年で、インド西部個体群はメスが6 - 7年で性成熟すると考えられている[4]。
食用とされることもあるが、一部の民族による自家採集のみで一般的ではない[4]。
カボチャなどを食害する害獣とみなされることもある[4]。一方で住民に餌を与えられたり、野菜の残飯を漁る個体もいる[4]。
都市や農地開発、伐採による生息地の破壊、ペット用の乱獲などにより、生息数は減少している[4]。ワシントン条約発効時の1975年から附属書IIに掲載されている(発効時はGeochelone属単位、1977年以降はリクガメ科単位)[2]。分布する3国では1970年代半ばに国内法で輸出も厳しく制限し、1970年代後期にはワシントン条約を批准しているため、1980年代には生息地からの正規輸出はほぼ停止(1992年にスリランカから学術用10頭・商業用958頭の輸出例、パキスタンから飼育下繁殖個体もしくは他国経由で輸出例は3件ある)している[4]。上述のように孵化した幼体は雨期に一斉に現れるため、捕獲が容易だと考えられている[4]。生息地やインドネシア・タイ・日本において密輸が摘発された例もある[4]。
ペットとして飼育されることもある。上記のように1980年代には生息地からの正規輸出はほぼ停止しているが、日本国内ではペットショップで見かけられる[6]。2002年に関東・中部・近畿地方の専門店32店舗で行われた調査では、カメ目全種で最も取扱いが多く30店舗で販売されていたとする報告例もある[6]。一方で本種の1981 - 2001年にかけての日本への正規輸入個体数は5,228頭と少なく、密輸・不正取引が続いていることから、密輸された個体が流通しているおそれがある[6]。他種と比較すると1981 - 2001年にかけての日本へのワシントン条約に掲載されたカメ目の総正規輸入個体数は186,719頭でヨツユビリクガメが最も多く、次いでケヅメリクガメ、ヒョウモンガメ、ギリシャリクガメ、ベルセオレガメでこの5種で総正規輸入個体数の約72 %を占める[6] 1990年代にはスーダン・マレーシア・ミャンマー・台湾などから、2000 - 2008年(2009 - 2010年は正規輸入個体がいない)にはアフガニスタン・ウクライナ・カザフスタン・ブルガリア・ヨルダンなどから輸出とされた個体が正規輸入されているが、本来分布していないはずの第三国へ密輸された個体がその国での野生個体もしくは飼育下繁殖個体として流通しているおそれがある[4]。