ボチョウジ属 Psychotria はアカネ科の属の1つ。極めて多くの種が含まれる。
直立性の低木から小高木だが、一部につる植物になるものがある[1]。葉は対生で托葉が葉柄の間にあり、これは往々に癒合している。葉は革質で縁は滑らかで切れ込んだりしない[2]。
花は茎の先端に生じる集散花序か円錐花序の形で付き、個々の花は小さいのが普通。萼は短い筒を作り、先端は5つの歯になるが、この歯は早くに脱落する。花冠の基部は花筒を作り、この部分は真っ直ぐで先端は5つに裂けるが、これは希に4ないし6裂の例がある。雄蘂は花冠の裂片と同数で花筒の内側につき、花糸は普通は短い。葯は細長い形で花筒から僅かに外に出る[3]。子房は2室で、それぞれに胚珠が1つだけある。果実はさほど大きくならず、球形から卵円形などの形を取り、多少とも液果、つまり柔らかい果肉に包まれた果実になって中に2個の核を含む。核には1個の種子が含まれ、種子は片面が扁平でもう片面が盛り上がるか、あるいは稜を持つ。
学名はギリシャ語で Psyche (生命)と trepho (保つ)に由来し、これは本属に薬用の種が含まれることによる[4]。
世界の熱帯から亜熱帯に広く分布する[5]。
この属は種数が多く、しかも初島(1975)では500種、佐竹他(1989)では700種、福岡(1997)は800種としており、更にDavis et al.(2001)では2000種近くとあるから、どうやら絶賛種数増加中ということのようである。要するにどんどん新種が発見されている模様である。種数の多さでは樹木を含む植物の属では最大のものの一つとのことで、その多様性と分類学的な複雑さには「途方に暮れる」といい、しかも多くの地域でこの類の研究は不十分であるという。近年の分類研究によるとこの属は側系統かあるいは多系統である可能性が高く、例えば近縁の、しかし明らかに区別出来る属、例えばアリ植物であるアリノスダマ Hydnophytum がこの属の系統の中に収まってしまうといったことが明らかになりつつある。従ってこの属と近縁の属の間で統合や細分がこれから行われる可能性が高い[6]。
日本国内では以下の5種が知られる。ボチョウジとナガミボチョウジは3mに達しない低木で、オガサワラボチョウジは高木で最大8mに達する。他の2種は這い上がるつる植物である。
学名が示すように薬用とされる種はある。だが園芸植物大事典(1994)でもほとんど取り上げられている種がなく、特に重要なものはほとんどない模様である。
なお、薬用植物として名の知られるトコン(吐根) Cephalaelis ipecacuanha (トコン属)はかつて本属に含められていた[7]。