タラ(鱈、大口魚、鰔)は、タラ目タラ科のうちタラ亜科に所属する魚類の総称。北半球の寒冷な海に分布する肉食性の底生魚で、重要な水産資源となる魚を多く含む[1]。
日本近海では北日本沿岸にマダラ・スケトウダラ・コマイの3属3種が分布する[1]。単に「タラ」と呼んだ場合はマダラ(Gadus macrocephalus)を指すことが多い。
温帯に分布するものや汽水域に入るものもいるが、ほとんどの種類は寒帯・亜寒帯の冷たい海に分布する海水魚である。
海底の近くで生活する底生魚で、水深200m以深で暮らすいわゆる深海魚が多いが、季節によって生息深度を変える種類もいる。大きな群れを形成し、大規模な回遊を行うものもある[2]。背中側の体色は灰色や褐色で、水底に紛れる保護色となる。
食性は肉食性で、多毛類・貝類・頭足類などの無脊椎動物や他の魚類を捕食する。
産卵は冬期から早春にかけて行われる。卵は沈性卵で、砂泥の海底に産卵される。タラ類の一度の産卵数は数十万から数百万個に及び、魚類の中でも多産の部類である。親魚による卵や仔魚の保護はみられず、生残率は非常に低いと考えられる。
背鰭が3つ、臀鰭は2つに分かれることがタラ亜科の大きな特徴で、タラ目の他のグループ(チゴダラ科・ソコダラ科・メルルーサ科など)との鑑別点の一つとなっている[3]。口が大きく、下顎にヒゲをもつ種類が多い[3]。全長は数十cmを超える中・大型種が多く、最大のタイセイヨウダラは全長2mに達することもある[2]。
第1背鰭は頭部より後方に位置し、すべての鰭は棘条を欠く[2]。腹鰭は胸鰭よりも前方にある[2]。尾鰭の後端は截形か、あるいはやや陥凹する[3]。
タラ亜科はほとんどの種類が重要な水産資源として利用され、底引き網・延縄・釣りなどで漁獲される。
身は脂肪が少なく柔らかい白身で、鱈ちりなどの鍋料理や、棒鱈などの干物、フィッシュ・アンド・チップスのような揚げ物、バカラオなどの塩蔵品、かまぼこおよび魚肉ソーセージなどの練製品として利用される。肝臓からは肝油を採取するほか、オイル漬けにしたものはコッドレバーとして缶詰にされる。また、スケトウダラの卵巣(たらこ)、マダラの精巣(白子)、胃(韓国料理の食材チャンジャ)、舌(ノルウェー料理の食材。ムニエルにして食す)なども食材として用いられる。肉は鮮度の落ちが早く脂肪が少ない上に、古くなると独特のにおいを発する。そのため刺身等の生食は行われない(ただし、白子に関しては例外で主に寿司ネタ用として流通する)。干しダラはヨーロッパや南アメリカでよく使われる食材で戻して使われる。
漢字では身が雪のように白いことから「鱈」と書くが、これは和製漢字である。日本では古くから、大きな口を開けて他の生物を捕食することから「大口魚」と呼ばれていた。この和製漢字(国字)は、中国でも一般的に用いられている。なお、福建省の客家語では「大口魚」はハスを意味する。
非常に貪欲なことから、腹いっぱい食べるという意味の副詞「たらふく(鱈腹)」の語源となったといわれている。一方で、「たらふく」の語源は「足(た)らい脹(ふく)くるる」すなわち「満足して(腹が)脹れる」に由来し、「鱈腹」は当て字とする説もある。タラを解剖すると少なからぬ胃潰瘍の病巣が認められ、これがこの過食によるものだとする説がある。この話は魚類学者末広恭雄のエッセイにも書かれ、広く知られることとなった[要出典]。
タラ亜科は10属23種を含む[4][2]。分布の中心は北大西洋だが、一部は北極海や日本近海を含む北太平洋に生息する[1][3]。タラ科にはタラ亜科の他にカワメンタイ亜科 Lotinae(3属5種)、ヒゲダラ亜科 Gaidropsarinae(3属17種)、Phycinae(2属11種)が属する[4]。