原生動物(げんせいどうぶつ)とは単細胞生物のうち生態が動物的なもの。原虫とも。
歴史的には、生物を動物と植物に分けていた(2界説)頃に使われた分類群であり、動物「のうち」単細胞のものと定義されていた。
実際は雑多な生物の集まりであり、系統学的に妥当なグループに修正する試みもされたが、現在ではどの意味でも分類群としては使われず、大まかな総称として伝統的なグループを表すのに使われている。
もともと、動物界の1門「原生動物門」として扱われてきた。
1858年、リチャード・オーウェンは、原生動物を独立界「原生動物界」に引き上げた。
1860年、ジョン・ホッグは、原生動物と原生植物の違いはあまりないとして、それらを Primigenum 界にまとめた。1866年、エルンスト・ヘッケルはそのグループに原生生物 Protista 界と命名した。
伝統的には、
が置かれてきた。鞭毛虫綱と根足虫綱をまとめて有鞭肉質虫綱などとしたものもある。胞子虫綱は後に細分された。
これらのほとんどは、現在では、いくつもの界に分散して分類されている。
鞭毛虫類には、光合成能のあるものも含まれており、これを植物性鞭毛虫と称していた。従ってそこには、実質的に、ほとんどすべての藻類にまたがるものが含まれていたことになる。同様に、今では繊毛虫類以外の分類群は、いずれも多系統であると考えられている。生物の分類を参照のこと。
もはや存在しない分類群ではあるが、全体を見渡す意味はあると思われるので、簡単に記しておく。
原生動物という分類が無意味であると考えられるようになってから、新たなグループを原生動物と再定義する試みがなされた。しかしいずれも、長く広く使われることはなかった。
1993年、キャバリエ=スミスは、ミトコンドリアを持つ真核生物である Metakaryota のうち、(ほぼ)単系統と思われた動物・植物・真菌・クロミスタを除いた残りの、(ほぼ)側系統を原生動物と定義し[1]、8界説を唱えた。なお、残りの3界はアーケゾア・真正細菌・古細菌である。彼の原生動物は、クロミスタという大きなグループが含まれないものの、「進化した生物を除いた残り」というコンセプトは従来の原生生物に近い。
1998年にはキャバリエ=スミスは、ミトコンドリアのない真核生物であるアーケゾアを原生動物に加えた。当初は原生動物はアーケゾア亜界と Neozoa 亜界(8界説での原生動物)に分けられていたが、次第にアーケゾアというグループ分けは無意味ということになり、別の分類をするようになった。