コショウ(胡椒、学名:Piper nigrum)は、コショウ科コショウ属のつる性植物、または、その果実を原料とする香辛料のこと。インド原産[1]。味は辛い[2] 。
収穫のタイミングや製法の違いにより以下の4種類が存在する。 ピペリン (piperine) という化学物質が胡椒に独特の風味を与える。
胡椒は、粉に挽いたものや、さらに塩と混ぜた「塩コショウ」として売られているものが多いが、本来の風味を愉しむなら、ペパー・ミルで、使うたびに挽くのが理想的である。ペパー・ミルは、使い捨ての「ミル付きコショウ」から、円筒形のボディに擬宝珠のようなハンドルの付いた、木製のデザインに優れた芸術品まで、いろいろな種類がある。
コショウの消費期限は製造方法や保管状況にもよるがおおよそ2〜3年である。挽いた後のものは挽く前より香味が飛びやすくなるので短くなる。また「白胡椒」「黒胡椒」の乾燥させたものは「青胡椒」「赤胡椒」といった乾燥させる前のものより長持ちしやすくなる。大航海時代など物流が発達する前は「青胡椒」「赤胡椒」は原産地での香辛料や食材として使用されていたのに対し、原産地から離れていたヨーロッパでは「白胡椒」「黒胡椒」を使用した料理が多かった。現在は物流が発達したことや世界各地で胡椒の生産が行なえるようになったこと、さらに各国の料理が世界中に広まっていることからこの区別はなくなっている。
コショウは、古代からインド地方の主要な輸出品だった。紀元前4世紀の初め頃、古代ギリシアの植物学者テオフラストゥスは『植物誌』の中でコショウと長コショウを考察している。コショウは当時から貴重で、紀元1世紀のローマの歴史家大プリニウスは1ポンド(約500グラム)の長コショウの価値は15デナーリ、白コショウは7デナーリ、黒コショウは4デナーリと記録している。古代の地中海世界では、長コショウが成熟したものが黒コショウになると考えられており、その間違いは、16世紀にガルシア・デ・オルタによって改められるまで続いた[6]。
胡椒は、ピペリン(piperine)による抗菌・防腐・防虫作用が知られており、冷蔵技術が未発達であった中世においては、料理に欠かすことのできないものでもあり、大航海時代に食料を長期保存するためのものとして極めて珍重された。ヨーロッパの様々な料理に使われており、またその影響を受けた様々な料理でも使われている。このため、インドへの航路が見つかるまでは、ヨーロッパでは非常に重宝されていた。十字軍、大航海時代などの目的のひとつが胡椒であったという見方もある[7][8][9]。その取引における高値のさまは、1世紀のローマにおいて、金や銀と胡椒が同重量で交換されたかのような表現もされ[10]、 中世ヨーロッパにおいては、香辛料の中で最も高価であり、貨幣の代用として用いられたりもした[11]。輸入をしていたヴェネチアの人々は胡椒をさして「天国の種子」と呼び、価値を高めることもしていたという[12]。
ゲルマン部族のリーダー(西ゴート族の王)であったアラリック1世にローマが包囲された際、市民は包囲を解く代償として金5千ポンド、銀3万ポンド、絹のチュニック4千着、緋色に染めた皮革3千枚、そして胡椒3千ポンドを渡すことに同意した[13]。
中国では西方から伝来した香辛料という意味で、胡椒と呼ばれた(胡はソグド人を中心に中国から見て西方・北方の異民族を指す字であり、椒はカホクザンショウを中心にサンショウ属の香辛料を指す字である)。日本には中国を経て伝来しており、そのため日本でもコショウ(胡椒)と呼ばれる。 天平勝宝8年(756)、聖武天皇の77日忌にその遺品が東大寺に献納された。その献納品の目録『東大寺献物帳』の中にコショウが記載されている。当時の日本ではコショウは生薬として用いられていた。コショウはその後も断続的に輸入され、平安時代には調味料として利用されるようになった[14]。
唐辛子が伝来する以前には、山椒と並ぶ香辛料として現在よりも多用されており、うどんの薬味としても用いられていた。現在でも船場汁、潮汁、沢煮椀などの吸い物類を中心に、薬味としてコショウを用いる日本料理は残存している。(「胡椒茶漬け」という料理があったという記録もある)。 唐辛子はその伝来当初、胡椒の亜種として「南蛮胡椒」「高麗胡椒」などと呼ばれていた。このため現在でも九州地方を中心に、唐辛子の事を「胡椒」と呼ぶ地域がある。九州北部にて製造される柚子胡椒や、沖縄のコーレーグス(高麗胡椒)の原料は唐辛子である。胡椒を主に唐辛子の意で用いる地域では、P. nigrumは「洋胡椒」と呼んで区別することもある。
原産地はインド南西マラバール地方[1]。 現在ではインド・インドネシア・マレーシア・ベトナム・スリランカ・ブラジル・カンボジアが主な産地[15]。
通常は接木栽培であり、種から発芽させることは非常に困難である。高さは5〜9メートルに達し、木質になるつる茎は、支柱などに巻きつけ生育させる。さし木3年目から少しずつ花房をつけはじめ果実をつける。果実はひと房に50〜60個で7〜8年で最盛期を迎え、以降15-20年間収穫できる。1本のつるからの乾物年収量は約2kgである[15]。
連作障害があり土壌により植物寄生性線虫が発生したり[16]病害などにかかりやすく、南米での栽培では壊滅的な打撃が発生したことがある[17]。胡椒栽培は肥料代や労力のわりに価格が安く、放置される農園もある[18]。一方、21世紀に入ると情報技術の進歩により物流状況や市場価格がいち早く確認できるようになったため生産調整が可能になったこと、また中華人民共和国やインドなど人口の多い地域で需要が増大したことでコショウの価格は再び上がるようになり、2005年から2014年の間に横浜港での通関単価が4倍に高騰している[19]。
同じコショウ属に属する東南アジア原産のヒハツモドキ(P. retrofractum)も沖縄などで古くから香辛料として使われる。なお、ヒハツモドキと形状の似ているヒハツ(P. longum、長コショウ)はかつてはヨーロッパにおいてコショウと概ね混同されてはいたものの同様に利用されていた。
日本本土ではフウトウカズラ(風藤蔓、P. kadzura)が神奈川県・千葉県以南各地の海岸近くに自生するが、用途はない。
成分としてアルカロイドに分類されるピペリンが含まれており、薬効を期待した薬膳料理に使用される[1]。効能としては消化不良、嘔吐、下痢、腹痛などの症状に対して[1]、また、抗がん作用、抗酸化作用[20]もあるとされる。ダイエット用などのサプリメント、他の成分の吸収率を高めるなどの効果があるとして健康食品にも使用され [21] [22] [23] 、一緒に摂取した医薬品の作用を増強することも報告されている[20]が、多量に摂取した場合に他の医薬品と相互作用を示すことから、健康被害が発生する可能性を否定できず注意が必要ともされる[24]。
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