ヒマラヤスギ属(ヒマラヤスギぞく、学名:Cedrus)は、マツ目マツ科の属の1つ。よく似た円錐形の形態をとるモミ属の近縁種である。ヒマラヤ山脈西部や地中海地方に分布し、ヒマラヤでは標高1,500から3,200m、地中海では1,000から2,200mに自生している。
高さは40-50m(時には60m)にもなり、ひび割れた表皮からスパイス香のする濃厚な樹液を出す。新芽は2枚の葉からなり、長い葉が枝を支える役割を果たし、短い葉が葉の大部分を担う。葉は針状の常緑性で8-60mmの長さで枝に対しらせん状についている。色は明るい緑から暗い緑、淡い青緑まで様々で、葉を保護するワックス層の厚さに依存する。松かさは樽型で6-12cmの大きさであり、モミと同様に成熟すると種子を飛散させるために自壊する。種子は10-15mmの長さで20-30mmの羽を持つ。また味の悪い樹脂を含む2、3個の突起があるが、これはリスなどによる捕食を避けるためだと考えられている。松かさの成熟には9月から10月に行われる受粉とその後の種子の成長が必要で、約1年間を要する。ヒマラヤスギ属の樹木はチョウ目の幼虫の餌にもなる。
ヒマラヤスギ属は4種に分類される[1]。
ラテン語名の cedrus と属の学名の Cedrus はともにギリシア語の kedros に由来する。ギリシア語とラテン語で kedros と cedrus は、現在ヒマラヤスギ属とビャクシン属に含まれる植物を表す言葉であった。ビャクシン属はギリシアに自生していたが、ヒマラヤスギ属は自生していなかった。そして kedros という言葉は中東に由来するものではなく、ギリシア内でビャクシン属を表す言葉として発生し、後に同じように強い香りを発するヒマラヤスギについても表すようになっていったと考えられている。cedar という言葉はヒノキ科、センダン科、ギョリュウ科など強い香りを発する他の種の樹木の名前の一部にも使われている。
ヒマラヤスギ属の樹木は、冬季の気温が-25℃を下回らない温帯で園芸用の飾り木として人気がある。またその耐久性にも注目され、紀元前1,000年に作られたイスラエルのソロモン王の神殿に使われていたのが有名である。またこの木は屋根材として防寒の目的にも用いられている。さらにヒマラヤスギおよびこれから得られる精油は天然の虫除け剤として使われ、結婚の際に持参するホープチェストはヒマラヤスギから作られることが多い。トルコを中心とした地中海地方ではヒマラヤスギの大規模な植林が行われており、毎年5,000万本以上の苗が植えられている。