ハシボソガラス(嘴細烏、学名:Corvus corone)は、鳥綱スズメ目カラス科カラス属に分類される鳥。
英名のCarrion Crowは「死肉を食うカラス」を意味するが、実際は後述のとおり植物質を好む。
ユーラシア大陸(東部、西部)。
全長50cmほどで、全身が光沢のある黒色をしており、雌雄同色。 外から見える羽は黒いが、皮膚に近いところの短い羽毛はダウンジャケットのように白く柔らかな羽毛で、寒さに非常に強く冬も平気で水浴びをする。 地肌の色は黒っぽい灰色。脚とクチバシも黒色である。 突然変異で白い個体が出現することもあり、これはアルビノまたは白変種と考えられる。
ハシブトガラスに似るがやや小さく、嘴が細く上嘴があまり曲がっていないところと、額(嘴の上)が出っ張っていないところで判別できる。
ハシボソガラスと最も近縁な種はクビワガラスであり、ハシブトガラスはやや離れている。
河川敷や農耕地など開けた環境に生息する。極度に都市化が進んだ地域や高山帯ではあまり見られない。ペアは年間を通し縄張りを持つが、非繁殖期には夜間決まった林に集団でねぐらをとる。
鳴き声は「ガーガー」と濁って聞こえるが、ハシブトガラスのそれに似る場合もある。開けた場所に位置する樹木に木の枝を組み合わせたお椀状の巣を作るが、近年では巣材に針金やハンガー等を利用することもある。 仙台市などで、信号停車中の車のタイヤの前にクルミを置いて割るのも本種である。
食性は雑食で、昆虫類、鳥類の卵や雛、小動物、動物の死骸、果実、種子等を食べる。ハシブトガラスよりも比較的植物質を好む傾向にある。ハシブトガラスと違い地面をウォーキング(交互に脚を出して歩く)する時間が長いため地面採食(土食い)もする。
産卵期は4月頃で、1回に3-5個の卵を産む。主にメスが抱卵し、その間オスはメスに餌を運ぶ。抱卵日数は約20日。雛に対する給餌は雌雄共同で行い、雛は孵化後約1か月で巣立つ。子育てに失敗すると再度抱卵し子育てを行うこともあるが、子育てに時間が掛かるため北では1度が限度と見られる。
ハシブトガラスが森林に生息していたのに対し、本種は人里近くに生息し住み分けてきた。 かつて日本で「カラス」といえば本種を指したが、都市部へハシブトガラスが進出したため、「日本のカラス」の座をハシブトガラスに譲ることになった。実際に、都市化にともないハシブトガラスが個体数を増やしているのに対して、本種は個体数を漸減している。
学名の種小名 corone は、一般には鳴き声に由来していると考えられているが、白いカラスを従えていたギリシャ神話の太陽神アポローンの愛人、コローニスに由来しているという説もある。
狩猟鳥ではあるが、今日肉を食用に供することはまずなく、もっぱら煩瑣な手続きを経ることなく農業害鳥として駆除できるのに役立つ程度である。ただし世界的には中国や西洋において、古来より薬用として食べてきた歴史があり、いわゆるゲテモノとしてではなく一般的な食材に供した例も洋の東西を問わず世界的には多々ある。
日本においては北海道の一部、秋田県、長野県、岐阜県などでかつて食用に供されてきた。なかでも有名なのが長野県上田市のカラス田楽という郷土料理である。岐阜県においても、大正中期ごろまで地元の肉屋でカラス肉が売られていたという。
上はハシボソガラス、下は亜種のズキンガラス