シチメンチョウ(七面鳥、Meleagris gallopavo)は、シチメンチョウ属に分類される鳥である。
シチメンチョウ属の模式種である。なおシチメンチョウ属には他にヒョウモンシチメンチョウが属するが、まれにこれを別属とし七面鳥をシチメンチョウ属唯一の種とすることがある。
キジ目の最大種で全長122cm、体重は9kgに及ぶ。メスはオスのおよそ半分の全長60cm程度である。胴は金属光沢がある黒い羽毛で覆われていて、メスよりオスの方が光沢が強い。また、オスは胸部の羽毛が逆立っているが、頭部や頸部には羽毛がなく赤い皮膚が露出し、発達した肉垂がある。繁殖期になるとオスの皮膚は色が鮮やかになり、胸部が隆起する。和名の七面鳥の由来は頭部の首のところに裸出した皮膚が興奮すると赤、青、紫などに変化するため、七つの顔(面)を持つ様に見えることに由来する。体温は40°Cで、32km/hで走る。
アメリカ合衆国、カナダ南部ならびにメキシコに分布し、開けた落葉樹と針葉樹の混合林に生息する。食性は植物食傾向の強い雑食で果実、種子、昆虫類、両生類、爬虫類等を食べる。
繁殖期にはオス1羽に対しメス数羽からなる小規模な群れを形成し生活する。同じ親から生まれた若鳥も群れを形成し生活するが、その後オスだけの群れを形成する。繁殖期になるとオスは尾羽を扇状に広げ、翼を下げて振るわせ頭部の肉垂を膨らませてある一定の場所で徘徊する。繁殖形態は卵生で、メスが地面を掘って落ち葉を敷いた巣に1回に8-15個の卵を産む。1羽が作った巣に他のメスが卵を産むこともある。メスのみが抱卵を行い、雛の世話もメスのみが行う。メスは日光により卵を産みたくなる体質である。単為生殖を行う場合もある[1]。
危険を感じると走って逃げるが、短距離であれば飛翔することもできる。オスのみが出す警戒声(アラームコール)は鳥類の中でも最も大きく歓声のような独特な声である。
食用とされることもあり、家禽としても飼育される。現在家禽として飼育されているのは尾羽の先端が白いメキシコの個体群に由来するものとされる。中央アメリカの先住民族によって家畜化され新大陸「発見」後、1519年にはスペイン王室に、1541年にはイギリスのヘンリー8世に献上された。七面鳥の英語名のターキー(turkey)は、日本でも食肉名として用いられる。味はニワトリより脂分が少なく、さっぱりとしている。トルコを意味する名前が北アメリカ原産の鳥につけられている理由は、トルコ経由で欧州に伝来したホロホロチョウとの混同によるもの。
アメリカ合衆国とカナダでは詰め物をした七面鳥の丸焼きが特に感謝祭(Thanksgiving Day)でのごちそうであり、感謝祭のことを口語的にTurkey Day(七面鳥の日)とも呼ぶ。クリスマスの料理としても供される。シチメンチョウのハム(turkey ham)やベーコン(turkey bacon)は一年を通じて販売されており、豚肉に比べて脂身の少ない「健康的な」代替品と考えられている。
「すべてのヤンキーの父」で知られるベンジャミン・フランクリンはアメリカ合衆国の国鳥として最後までハクトウワシに反対し、シチメンチョウを推していた。娘宛の手紙にて[2]ハクトウワシは死んだ魚を漁る、他の鳥から獲物を横取りするなどの不品行で横着な鳥で道徳的観念からふさわしくないとこき下ろし、野生のシチメンチョウこそ生粋のアメリカ人を象徴するにふさわしい勇気と正義感を兼ね備えた鳥だとした。ただ文面からは冗談、皮肉であるとも受けとれ、本気で推薦していたのかは定かではない。
家禽を撃つことは容易い事から、アメリカの慣用句として「ターキー・シュート(七面鳥撃ち)」がある。
感謝祭前日、ホワイトハウスにて現職大統領が七面鳥を放鳥して「恩赦」を与える行事が行われる。感謝祭用にジョン・F・ケネディ大統領へ「Good Eatin', Mr. President(美味しく食べてね、大統領)」と首からメッセージを下げた七面鳥が贈られたものの、彼はその七面鳥を食べなかったことが始まりとされる[3]。2014年の例では放免されたシチメンチョウは、バージニア州の農場で余生を送ることとなった[4]。
イギリスではローストした七面鳥がクリスマス料理のごちそうとされる。ロンドンでは、台所から発生する七面鳥の油が50mプール2杯分にも及ぶと推定されており、下水管に大きな負担を与えている[5]。チャールズ・ディケンズの『クリスマス・キャロル』の最後の章で、改心した主人公が彼の書記に買い与えるのが七面鳥である。1960年に発生した3ヶ月で10万羽の大量死事件がきっかけとなりアフラトキシンが発見された。
アメリカ合衆国やイギリスのようなクリスマスに七面鳥肉を食する文化が日本に移入したが、入手の困難性から鶏肉に代用されることが多く、七面鳥が前面に露出することは稀である。クリスマス料理としてもチキンが主流という状態である。
食肉用に家禽化されたシチメンチョウの中で最も広く飼育されている品種である。野生種や既存のシチメンチョウの品種に比べて胸骨や脚が短いため人の補助なしでは繁殖できず、繁殖は体外受精によっておこなわれている。改良の結果大胸筋が肥大しているため胸肉が多く取れ羽毛が白く枝肉になったときに目立たないことから、食肉用の大規模なシチメンチョウ飼育場で盛んに飼育されるようになった。
シチメンチョウ(七面鳥、Meleagris gallopavo)は、シチメンチョウ属に分類される鳥である。
シチメンチョウ属の模式種である。なおシチメンチョウ属には他にヒョウモンシチメンチョウが属するが、まれにこれを別属とし七面鳥をシチメンチョウ属唯一の種とすることがある。