Silurus glanisは、条鰭綱ナマズ目ナマズ科ナマズ属に分類される魚類。
中央、南、西ヨーロッパやバルト海、カスピ海近辺で広く見られる大きなナマズである。マイン川、クズルウルマク川など。
口には沢山の小さい歯が並んでいる。上あごには2本の長いひげ、下あごには4本の短いひげがある。尻びれは長く、尾びれまで繋がっており、比較的前方には小さくて鋭い背びれがある。鋭い胸びれを用いて渦を作り、獲物の方向感を失わせて大きな口で飲み込む。非常に滑りやすい皮膚は緑茶色で、腹は薄黄色か白色である。色は環境によって変化する。透明な水に住むと黒っぽくなり、濁った水に住むと茶色っぽくなる。重さや長さは季節によっても変わる。
雌は体重1kgあたり3万個にのぼる卵を産む。雄は3日から10日で水温が上昇し、卵が孵化するまで巣を守る。水位が急速に下がる時は、卵を湿った状態にしておくため、雄は尾で卵をまき散らす様子が観察される。
最大で長さは4m、体重は394kgにも達する。淡水魚としては、オオチョウザメに次ぐ2番目の大きさである。しかし、このような長さにまでなるのは非常に稀である。前世紀の間は証明できなかったが、19世紀ごろから信頼のできる報告が上がっている。Brehms Tierlebenは、ドナウ川で体長3m、体重200から250kgの個体を釣ったというHecklとKnerの古い報告を引用している。Vogtの1894年の報告では、ビール湖で体長2.2m、体重68kgの個体を得たとされる[3]。1856年、K. T. Kessler[4]はドニエプル川の体長5m、体重400kgにも及ぶ個体について記している。しかしこれらの報告には物理的な証拠がないため、今日では正当性を立証することができない。また、これらの報告は典型的な巨大魚と比べて長さと重さの関係が正常ではなく、さらに信憑性が疑われることとなっている。体長3mの個体の重さは150kg程度であり、体長5mの個体がいるとすればその重さは700kgを超えるはずである。
ほとんどの個体の長さは1.3mから1.6mに過ぎず、2mを越える体長の個体は非常に稀である。1.5mの個体は15kgから20kg程度で、2.2mの個体は約65kgである。
例外的に良好な生育環境に恵まれた場合にのみ、体長は2mを越え、ドイツのロッテンブルク・アム・ネッカー近郊のKiebingenで見つかった個体は体長2.49m、体重89kである。ポーランド、ウクライナ、スペイン、イタリア、ギリシア等でこれよりも大きな個体が見つかっている。ギリシアは気候が良く、餌が豊富で天敵がいないため、大きく育つ。これまでで最大の個体は、イタリアのポー川で見つかった体長2.78m、体重144kgの個体である[5]。これより大きな体長5mの個体等の報告は、チョウザメの誤認等の疑いがある。
淡水域から汽水域に住む魚で、幅広く平たい頭と大きい口が特徴である。少なくとも30年以上生きることができ、聴力がとても良い。
環形動物、腹足綱、昆虫、甲殻類、魚等を食べる。大きい個体はカエル、ネズミの他、アヒルやハトなどの鳥類も食べる[6]。
ヨーロッパオオナマズは、大きく暖かい湖や深くて流れの遅い川に住む。川底や沈んだ木の穴のような、身を隠せる場所を好み、開水域や水底で餌を食べる。また食用として池で養殖されることもある。
淡水に住む幼魚には食用としての価値があり、15kg以下の個体は味が良いとされている。この大きさより大きくなると、脂肪が多くなり、食用には適さなくなる。卵には毒があり、食べられない。
非常に大きな個体は、稀に人間を襲うという噂がある。アニマルプラネット『怪物魚を追え!』で放送されたジェレミー・ウェイド(イギリスの生物学者・釣り師)の調査でもこのエピソードが紹介された。オーストリアの新聞Der Standardの2009年8月5日付けの記事では、ハンガリーのジェール近くで巨大な個体を素手で獲ろうとした釣り人が、右脚を水中に引き込まれたという記事を載せている。釣り人は辛くも魚から逃げたが、彼によると魚の重さは100kgはあったということである[7]。しかしこれは、人間が先に手を出したのであって、大きな個体であっても人間を餌とは認識しないと考えられる。
元来生息していなかった南ヨーロッパ地域に外来種として導入された際の影響について関心が寄せられている。アフリカのビクトリア湖に導入されたナイルパーチが急速に固有種を絶滅させた際の状況等が参考にされている。深刻な影響はすぐ湖全体に広がり、元来の生態系のほとんどが破壊された。この事例は極端だが、外来種の導入では常に生態系への影響を考慮する必要がある。日本では2016年8月にヨーロッパナマズとして特定外来生物に指定(同年10月に施行)され、飼養・保管・運搬・放出・輸入などが規制された[8]。