ザトウムシ(座頭虫)は、節足動物門鋏角亜門クモ綱ザトウムシ目に属する動物の総称である。非常に足の長いものがあり、豆に針金の足をつけたような独特の姿をしている。長い足で前を探りながら歩く様子から、座頭虫の名がある。
一瞥するとクモを連想させる外見で、俗称としてメクラグモと呼ばれることもあるが、クモとは別グループに属する。
最古の化石記録は4億1千万年前(デボン紀に相当)のものが知られている。
英語圏の名称はHarvestman(刈り入れ人夫)、特に米国では“あしながおじさん(Daddy Longlegs)”の愛称がある。
ザトウムシ目は、長い足を伸ばし、豆粒のような体を中空に支え、その体を揺らしながら歩く様子が非常に特徴的である 。多くは頭胴長が1~2cm程度でごく小型のものもある。頭胸部と腹部は密着して、全体として楕円形にまとまる。外皮は比較的丈夫で、クモの腹部のように柔らかくない。体色は地味なものが多いが、金属光沢をもつものや、鮮やかな色彩のものもあり、背面などに棘を備えるものもある。また雌雄で性的二型を示すものもある。「座頭」ムシ、メクラグモなどと呼ばれるが、通常頭胸部の真中に左右1対の目がある。
ザトウムシ類は足の長さでほぼ3つの型に分けられる。足の短いものは、ダニザトウムシなど、ごく小型で、一見ダニのような姿である。中位の足の長さのものは、丸い体のクモのような感じの虫で、アカザトウムシやオオヒラタザトウムシなどがある。足の長いものは、非常に細い脚で、長いものでは10cmを超えるものがあり、日本産のナミザトウムシでは、雄の第二脚が180mmに達する例がある。
ザトウムシ類は、クモ綱のなかでは例外的に雄がペニスを有し、真の交尾を行う。雌雄は向き合って、腹面を触れ合う形で交尾をする。
体は頭胸部と腹部からなり、頭胸部と腹部との間、及び腹部の体節は明瞭に認められるが、くびれはなくクモ類のような腹柄はない。
頭胸部の背面はキチン質の丈夫な背板に覆われる。カイキザトウムシ類では、頭胸部と腹部の背板は分かれているが、他の類では、腹部前方の体節の背板が、頭胸部に癒合している。ダニザトウムシ類では、頭胸部の背板は腹部前方の背板と癒合して、大きな盾甲を形成する。背面の中央近くに、一対の単眼があるが、ダニザトウムシ類では例外的に単眼を欠く。眼は通常、背甲中央の小さな盛り上がり(眼丘)の両側面に位置し、眼丘が幅広く発達するものや、ほとんど認められないものもある。また背板には臭腺が開き、その位置は群によって異なる。防御および情報伝達に用いられると考えられるが、詳細は不明である。腹面には中央に腹板があるが、触肢や歩脚の基部に圧迫されてごく小さく、腹面はほとんど付属肢の基部に覆われる。
付属肢は頭胸部に六対あり、1対の鋏角と触肢、4対の歩脚をもつ。
身体の前端に短い鋏状の鋏角があり、口はその間の腹面側に開く。鋏角は3節からなり、先の2節が鋏を構成する。これは餌をつかみ、引き裂くのに用いられ、また、他の付属肢を清掃するのにも使う。普通は小さくて目立たないが、サスマタアゴザトウムシでは、鋏角が強大に発達し、捕獲器となる。また形状に性的二形が見られるものや、発音器と思われる構造が知られているものがある。
触肢は6節からなり、基部の節は顎葉を形成する。この節が決して融合しないのは、ザトウムシ類の特徴の一つとされる。多くのものでは短い歩脚状で、獲物をつかみ、鋏角に渡すのに用いられる。またアカザトウムシ類など捕食性のものでは、鎌状の捕獲器になっている。触肢にも形状に性的二形が見られるものがある。
歩脚はいずれも比較的単純な形をしている。長さについては様々で、ダニザトウムシ類などでは長いものでも体長の2倍を超えない。それ以外のものでは体長の数倍以上、ナミザトウムシでは最も長い脚が体長の30倍にも達する。ダニザトウムシ類では第一脚が最も長いが、それ以外の類では第二脚が特に長く、これを前に伸ばし、昆虫の触角のような器官として探るように使う。歩行にはそれ以外の三対を用いる。
腹部には付属肢はなく、腹面に呼吸器官である気管の開口部がある。背面には体節ごとに背板が並ぶが、いくつかの群では前方のものが頭胸部の背甲と癒合する。腹面にも体節ごとに腹板があり、前端の腹板が胸部に食い込む形になるものが多い。
多くのものが森林に住み、小型のものは土壌動物として生活する。足の長いものは、低木や草の上、岩陰などで生活する。乾燥地帯に生息するものもあり、日本では海岸の岩陰に住むものがある。
雑食性で、通常昆虫などの節足動物やミミズなどの小動物を捕食するが、死んだ虫やキノコなどを食べるものもある。
天敵に対する防御として、同じクモ形類のクモやサソリのような強い毒性などは知られていない。防御行動としては臭腺から忌避物質を分泌したり、足を自切することがある。刺激を受けると身体を大きく揺するように動いたり、オオヒラタザトウムシなど地面や岩の上にはいつくばって、つついても動かないようになるものも防御行動の一つと考えられるが、詳細は不明である。
日本の学会ではザトウムシをダニに近縁な動物としている。[1] 海外でも1980年代まではダニに近縁とする考え方が主流であったが、分子解析の発達により現在ではサソリ、カニムシ、ヒヨケムシとともに走脚亜綱(英語版)へと分類するようになった。[2] こちらではザトウムシ目のみで単系統を成すのか、それともカニムシ・ヒヨケムシのグループと合わせてはじめて単系統を成すのか議論が続いている。(英語版)
世界で約4000種ほどが知られる。
ザトウムシ目 Phalangida Opiliones
ザトウムシ(座頭虫)は、節足動物門鋏角亜門クモ綱ザトウムシ目に属する動物の総称である。非常に足の長いものがあり、豆に針金の足をつけたような独特の姿をしている。長い足で前を探りながら歩く様子から、座頭虫の名がある。
一瞥するとクモを連想させる外見で、俗称としてメクラグモと呼ばれることもあるが、クモとは別グループに属する。
最古の化石記録は4億1千万年前(デボン紀に相当)のものが知られている。
英語圏の名称はHarvestman(刈り入れ人夫)、特に米国では“あしながおじさん(Daddy Longlegs)”の愛称がある。