コモドオオトカゲ (Varanus komodoensis) は、有鱗目オオトカゲ科オオトカゲ属に分類されるトカゲ。コモドドラゴンとも呼ばれる[7]。
インドネシア(ギリダサミ島、ギリモタン島、コモド島、フローレス島南部、リンチャ島)[6]
種小名komodoensisは「コモド産の」を意味する。
最大全長313センチメートル(セントルイス動物園の飼育個体)[5][4]。頭胴長70 - 130センチメートル[6]。最大体重166キログラム[5]。全長約250センチメートルの個体で平均体重47キログラムという計測例があるが、食物が体内にあるかどうかで変動が非常に大きい[5]。全長200-300cm、体重約70kg[8]。頑丈な体型をしており、メスよりもオスの方が大型になる。最大全長はハナブトオオトカゲの方が大型だが、本種の方が尾の比率が短く(本種は尾長が頭胴長よりやや短いが、ハナブトオオトカゲは尾長が頭胴長の約2倍)体重が重い[5]。分布域には数万年前まで肩高150センチメートルのゾウが分布していたため、それらを捕食するために大型化したとする説もある[6]。体色は暗灰色で、頸部や背面では褐色を帯びる個体もいる[6]。
頭部は小型で細長い。吻はやや太くて短く、吻端は幅広く丸みを帯びる[6]。鼻孔は吻端寄りで、やや前方に向かって開口する[6]。嗅覚は発達し、4キロメートル先にある動物の死骸の匂いも察知することもできる[4]。歯は基部が幅広く側偏し、先端が尖り後方へ湾曲する[5]。縁は鋸状で、獲物の肉を切断できるように特殊化している[5]。四肢は発達し、鋭い爪が生える。尾は側偏する。
孵化直後の幼体は全長25 - 56センチメートル[5]。幼体の胴体には黄色い斑点が見られるが[4]、成長に伴い消失する[6]。
以前は小スンダ列島に全長7メートルに達する・スイギュウを倒す・火を吐く(舌を出す)オオトカゲや陸棲のワニが生息するとされていたが詳細は不明であった[5][4][9]。一方で少なくとも1840年にはスンバ島の首長が本種に関する記録を残していた[9]。1910年にコモド島に不時着したオランダ人パイロットによる目撃情報や、同年に全長2メートル以上の個体が射殺されたことにより本種の詳細が判明した[5]。1912年になりジャワ島に持ち込まれた2頭の成体と1頭の亜成体を基に記載された[5][4]。
乾燥した落葉樹林やサバンナ・雨期にのみ水がある河辺林などに生息する[4]。幼体は樹上棲傾向が強い[4]、成体も大型個体を除けば木に登ることもある[5]。薄明時から日光浴を行って体温を上げてから活動する[6]。水中を泳ぐこともあり[6]、450メートルの距離を泳いだり水深4メートルまで潜水した例もある[5]。全長75センチメートル以下の個体は主に樹洞や樹皮の下などを巣穴とし、全長75 - 150センチメートル以下の個体は地表の穴も利用するようになり、全長150センチメートル以上の個体は自分で掘ったりイノシシ類やジャコウネコ類の古巣を巣穴として利用する[5]。外敵に襲われると噛みついたり、尾を打ちつけて応戦する。
主にイノシシやシカ・野生化したスイギュウ・ヤギなどのウシ科などの大型哺乳類を食べるが[6]、齧歯類・コウモリ・サル・ジャコウネコ類などの哺乳類、鳥類やその卵、クサリヘビ科・コブラ科・ウミガメ科などの爬虫類、ワニの卵や幼体、動物の死骸なども食べる[5][4]。幼体は昆虫やヤモリ類などを食べる[5][4]。獲物を待ち伏せ、通りかかった獲物を捕食する[6]。
繁殖様式は卵生。オス同士は直立しての組み合い(コンバット行動・コンバットダンス)で、メスを巡って争う[5][6]。5 - 8月に交尾を行う[6]。オスは舌を出し入れして臭いを嗅ぎ、その後にメスの背中に爪を立てて音を出しメスが受け入れると交尾する。9月に斜面やツカツクリの巣に穴を掘り、1回に10 - 30個の卵を産む[6]。卵は4月に孵化する[6]。生後5 - 7年で性成熟すると考えられている[5][6]。
2006年12月21日付けの英科学誌ネイチャーに、イギリスの二つの動物園で雌が、雄との交尾なしで卵を産み、このうちの一カ所では子が孵ったと発表された。トカゲ類の中には雌単独の単為生殖を行う種もあるが、コモドオオトカゲで確認されたのは初めてとなる。
口中には食べ残しを栄養とする7種類以上の腐敗菌が増殖しており、噛み付かれた獲物は敗血症を発症して死亡すると長年考えられてきた[4][6]。
しかし、メルボルン大学のブライアン・フライらは、この説は誤りで、コモドオオトカゲは獲物の血液の凝固を阻害し、失血によるショック状態を引き起こす毒(ヘモトキシン[10])を持っているとの研究成果を発表した。毒は、ノコギリ状の歯で噛み付いて引っ張るような動作により、歯の間にある複数の毒管から流し込まれる。これは、毒の注入に特化した結果、牙としての強度や殺傷力が弱まってしまった毒蛇などと異なり、歯自体の強度と殺傷能力を保ったまま毒の注入を可能とする構造であると推測されている[11]。
飼育下では幼体からならした個体は人間や飼育環境にも適応するとされる[4]。飼い馴らすと、飼い主と一緒に散歩するほどに馴れるといわれる[12]。 一方で1974年に成人男性が襲われ食べられた記録がある[4]。コモド国立公園によると1974年以降30人がコモドオオトカゲにかまれ、うち5人が死亡している。[13]。家畜が襲撃された例もある[14]。日本ではヴァラヌス・コモドエンスィスとして特定動物に指定されている[15]。
農地開発や森林伐採による生息地の破壊、密猟による獲物の減少などにより生息数は減少している[6]。以前はパダール島にも分布していたが、獲物となるシカを人間が狩り尽くしてしまったため絶滅し、フロレス島の大部分でも生息数が激減している[6]。1920年には保護の対象とされ、1970年にはインドネシア政府により生息地がコモド国立公園が指定されている[5]。パダール島には他島の個体を再導入する試みが進められている[6]。1975年のワシントン条約発効時からワシントン条約附属書Iに掲載されている[2]。1981年における生息数は7,213頭と推定されている[5]。
1942年(昭和17年)10月30日、捕獲された2匹が日本海軍より昭和天皇と香淳皇后に献上される[16]。当時侍従武官だった城英一郎海軍大佐は、天皇の反応について以下のように記録した[16]。
資料によって差異はあるが、生息地のコモド島には、主に2種類の言い伝えがある。
コモドオオトカゲ (Varanus komodoensis) は、有鱗目オオトカゲ科オオトカゲ属に分類されるトカゲ。コモドドラゴンとも呼ばれる。